音楽レビュー 「Atomic Heart(Mr.Children)」

変わりゆく時代と、変わらない想い。
Mr.Childrenが一気に大衆の中へ広がっていく中で生まれた作品。このアルバムには音楽性の幅広さと時代の変化に対する鋭い感性が詰まっています。ポップなメロディの中に、社会や人間関係への深い洞察が込められた作品です。
アルバム情報
アーティスト
Mr.Children
アルバム名
Atomic Heart
リリース日
1994年9月1日
収録曲
- Printing
- Dance Dance Dance
- ラヴ コネクション
- innocent world
- クラスメイト
- CROSS ROAD
- ジェラシー
- Asia(エイジア)
- Rain
- 雨のち晴れ
- Round About ~孤独の肖像~
- Over
全曲レビュー
Printing
たった24秒の短いインストですが、まるでアルバムの扉のような存在。電子音のパターンが機械的な「情報社会の始まり」を告げているようにも聞こえます。Dance Dance Danceへの繋がりがかっこいいですね。
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Dance Dance Dance
重たいベースとリズムが印象的なロックナンバー。歌詞の切れ味も鋭くて、欲や違和感をそのまま音にしたような空気が漂います。サビではその空気を一変させるような開放的なリズムがとても心地いいです。
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ラヴ コネクション
恋の始まりにあるドキドキと、ほんの少しの駆け引き。遊び心とグルーヴがあふれるメロディに乗せて、にぎやかに描かれています。片想いの高鳴りと、ちょっと大人びた“恋愛の会話”が楽しい曲です。
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innocent world
Mr.Childrenを象徴する代表的な一曲。「変わらないもの」なんてないと知りながらも、それでも未来に希望を込めて歩いていきたい。あたたかく、でも強いメッセージが、今も変わらず胸に届きます。バンドにとっても、ファンにとっても、特別な1曲です。
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クラスメイト
ふと思い出す、昔のあの人。何かがあったわけじゃないけれど、どこか心に残っている。静かで淡いメロディに乗せて、ふたりの距離感がリアルに描かれていて、不意に胸が締めつけられるような一曲です。
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CROSS ROAD
進むべき道に迷ったとき、何度でも立ち返りたくなる曲。強くなりたいけど、自信が持てない。そんな葛藤がやさしく、でも確かに響いてきます。熱量を帯びたサビの一言ひとことが、強く背中を押してくれますね。
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ジェラシー
ダークでミステリアスなメロディーでどこかクセになる一曲。誰かを想うがゆえに生まれる、どうしようもない“嫉妬”の感情。メロディは軽やかでも、内側にはどろりとした人間らしさが詰まっています。
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Asia(エイジア)
どこか異国の香りが漂うメロディと、印象的なリズム。“アジア”というテーマの中に、人間の本質や文化の揺らぎが込められています。聴けば聴くほど、心の奥に何かを残していくような、不思議な力を持つ一曲です。
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Rain
音の雨が、そっと世界にしみ込んでいくような短いインスト曲。たった20秒でも、前後の曲を自然につないでくれる“間”として機能しています。ほんのわずかな余白が、心を落ち着かせてくれます。
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雨のち晴れ
仕事や日常のなかで感じるちょっとした不満や憂鬱を、笑いながら流していく。うまくいかないもどかしさをユーモアで包んだ1曲。「そういう日もあるよね」と、聴いたあと少しだけ気持ちが軽くなるような曲です。
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Round About ~孤独の肖像~
孤独と向き合う時間の中で見えてくるもの。誰にも言えない気持ちを、自分の中で反芻しているような静けさが印象的。言葉にならない想いが、音の隙間からゆっくりと浮かび上がってきます。DISTANCE同様、夜の首都高のドライブにぴったりです。
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Over
このアルバムのラストを飾る、Mr.Childrenを代表する別れの歌。強がってはいるけれど、やっぱり寂しい。そんな“別れのあと”の気持ちが、とても丁寧に描かれています。何年経っても色褪せない、心にしみるバラードです。
お気に入り:
『Atomic Heart』は、Mr.Childrenが大きく羽ばたくきっかけになったアルバム。アルバム全体を通して感じるのは、華やかさよりも“心の奥にある声”を大切にしていること。明るさの中にある影、勢いの裏にあるためらい。そうした感情の重なりがこの作品の深さになっていて、聴くたびに違う曲が今の気持ちに寄り添ってくれるように思います。音楽のそばで自分の感情にちゃんと耳を澄ませたくなる。そんな時間をくれる1枚です。

Mr.Children「versus」